6/24 阿武隈山系 かわうちワインツーリズム

  みなさん、こんにちは。もうあっという間に9月。秋の実りの時期ですね。

6月に開催されたFoodCamp!レポートが遅くなりましたが、最新情報を交えてお届けしますので、是非お付き合いください。

 6月のもうひとつのFoodCamp!は、これまでとは少し趣向を変えたワインツーリズム。そう、テーマは「ワイン」です。


 ワインツーリズムとは、ワイン産地をめぐる旅のことで欧米では盛んな旅のスタイルです。日本でも近年のワイン人気に合わせて、ワイナリーやブドウ畑の訪問し、風景やワイン、郷土料理を楽しむツアーが各地ではじまっています。

 現在、約3ヘクタールの敷地に約1万1000本のワイン用ブドウの栽培を始めたかわうちワイン株式会社。醸造はこれからですが、ここ川内村でどのようなワインが出来るのか、その夢に思いを馳せるツアーです。




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■ワインドリームに懸ける想い


 ツアーレポートの前に少し、川内村でのワイン用ブドウ栽培が始まった背景を少しお話しさせてくださいね。


 ここ川内村は、福島県東部を縦に走る阿武隈山系の麓にある山間の村です。


 ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、川内村は福島第一原子力発電所の事故の際、原発から30km圏内という事で全村避難を余儀なくされました。しかし、その後、安全性が確認され、いち早く避難解除になった村でもあります。現在では避難前の約8割の住民が帰村しています。


  川内村は距離さえ近いものの、放射線量は県内でも低く、稲作の作付けも早くから再開しています。しかし、今なお残る風評被害などから帰村しても離農する方も少なくありません。


 また過疎の町でもあり、高齢化も著しく農業そのものを維持していくことや新しい産業を興すにも様々な困難が立ちはだかります。


 そんな中、ブドウ栽培を始めようと土地を探していたかわうちワイン株式会社の高木社長は、川内村に縁をいただき、震災前までは牧草地だった土地を貸していただけることになったのです。


 高木社長は、原子力工学と宇宙工学の技術者でその道に精通した方。ブドウからの放射線の移行がほとんど見られない事やもともと線量が低い土地であったことから、川内村の高田島地区でブドウ栽培をスタートすることにしました。


 かわうちワイン株式会社は川内村が筆頭株主となり高木社長を含めた民間個人も株主参加し、官設民営会社として2017年8月に設立されました。川内村にとっても新しいチャンレジです。


 そんな村の未来やワインを愛してやまない高木社長の長年の夢、さらには福島の復興・地方創成など様々な期待がこのワインドリームには寄せられているのです。



■シャルドネ、メルロー、カベルネソーヴィニヨン・・・栽培されているブドウを眺めながらのティスティング


 様々な想いが詰まったかわうちワインでの初のワインツーリズム。実は、ワインツーリズム自体、FoodCamp!では初の試みで、かわうちワイン株式会社さんにとってもこうしたツアーを受け入れたのは初めて。お互いに記念すべきファーストツーリズムとなりました。

 まず、見ていただきたいのがこの絶景。標高約1000メートル前後のなだらかな山々が幾重にも連なる阿武隈山系とブドウ畑が一望できる景色は圧巻。ワインの産地、フランス・ブルゴーニュを彷彿とさせます。

 ここ高田島ヴィンヤードには、主としてシャルドネ、メルロー、カベルネソーヴィニヨンの3種類のワイン用ブドウが植えられています。実を付けるまで3年かかるブドウですが、今年はなんとか収穫できそうとのこと。そして、来年・再来年のうちには試験醸造にこぎつけたいといったところ。

 そうなんです。ワインツーリズムといっても、まだ川内村産のワインはないんです。この時期、ちょうどブドウの花が咲いていました。この花が秋には実になり、そして、やがてワインに・・・。


ということで今日は川内村産ワインはありませんが、高木社長が厳選したカルフォルニアワインで、この3種類のブドウ品種の特性を知るためのテイスティングからスタートです。

国際規格のティスティンググラス(そんなのがあるんですね~)をご用意いただき、まずはシャルドネから。

 

 ティスティング最初のワインは、Anthony Korset Chardonney Barrel Select 2016です。

 カルフォルニアのソノマ郡で作られており、青りんごや梨、柑橘類の熟した果実の香り、そしてかすかにバニラも感じさせるシャルドネ100%のワイン。シャルドネと言えば樽を利かせた~となりそうですが、これは決して重たくない樽の使い方が絶妙で、多くの料理に合わせやすそうです。

 2本目は、Q Collection Chardonney 2014です。

 こちらもカルフォルニア州ソノマ郡のロシアンバレーにある日当たりの良い丘陵地帯で栽培されたシャルドネのワイン。豊かな酸味に加えて、バター、アップルパイ、洋梨などのさわやかな香りが広がります。

 ワイン愛好家の方も多く参加されていらっしゃるようで、香りを確認する姿もサマになっていますね~♬


 3本目は、Sallow Seas Rose 2016です。

 オレゴン州ウィラメットバレーのワイン。ウィラメットバレーは、その昔、内海で隆起して陸になった土地です。ブドウ畑の中で、貝殻やサメの歯を見かけることがあるとか。こちらはピノ・ノワール、シャルドネ、リースリングで作られたロゼです。リンゴやネクタリン、柑橘類の花が鮮やかなイメージの香りが立ち、その後にシャープな酸味に裏打ちされた素晴らしいミネラル感が口に広がるタイプ。

 そうそう、阿武隈高地も昔は海底で、堆積したかなり古い地層が隆起して陸地となった土地なんです。その証拠に、すぐ隣の田村市滝根町にはあぶくま洞などの鍾乳洞がありますし、いわき市四倉のアンモナイト、フタバスズキリュウなどの化石が産出しています。なので、地盤が固く、この辺りから湧き出る水はミネラル分を含んでいるといわれています。川内村のここ高田島で採れるブドウもミネラル感たっぷりなワインになるのかな~と勝手に妄想してしまいました。


 さてさて、4本目は、Volkhardet Ertate Merlot 2014です。

 こちらはカルフォルニア州ソノマ郡グリーンバレーのワインです。ブドウ本来のタンニンを引き出した滑らかな仕上がりが特徴です。


 5本目は、Penny Lane Merlot 2013です。

 こちらはナパ郡産。花に抜けるバニラの香りの上に熟したプラムとチェリーのフレーバーが瑞々しいワイン。豊かなタンニンを感じることのできるバランスの取れたミディアムボディです。


 まだまだいきます。

 6本目は、Indogo Eyes Cabernet Sauvignon 2013です。

 Indogo Eyesはイタリア系移民3人によって、2006年に設立されたナパでは新しいワイナリーですが、安定した品質のワインを手ごろな価格で提供しています。カベルネ・ソーヴィニョンの特徴であるスッキリしとしたスミレの花の香りが楽しめ、同時に豊かなタンニンを感じることのできるミディアムボディです。

 そして、ラストボトル。7本目は、Filaree Zinfandel 2012です。

 こちらはカリフォルニア州北部、太平洋岸に面しているメンドシー郡のワイン。果実味はアメリカのジンファンデルとしては控えめ。ミネラル感が強く、ほど良い酸味と優しいタンニンが魅力です。香りは、ラズベリーやプラムが際立つワインです。

 と、ザーッと当日ティスティングしたワインを一挙ご紹介しました。これらをそれぞれのブドウの木を目の前に、高木社長の解説を聞きながら一つずつティスティングする時間は、もうワインラバーには至極の時間でした。今回、ティスティングしたワインは、長らくアメリカにいらっしゃった高木社長が独自に手配されたワイン。今回ご提供したワイン7本のうち、日本で今手に入るのは「Indogo Eyes Cabernet Sauvignon 2013」だけというレア感に参加者の皆さんも真剣にティスティングしつつ、顔がほころぶ、ほころぶ・・・。

 ちなみに高木社長は年間300本は飲んでいるいう相当のワインラバー!ワイン好きが集まる会とあって、本当に楽しそうです。


■川内村の食材とワインのマリアージュ!!


 ヴィンヤードでのティスティングの後は、お待ちかねのランチタイムです。今回のお料理は、このFoodCamp!では絶大なる信頼のビューホテルの松岡料理長にお願いしました。


 毎回そうなんですがFoodCamp!の料理をお願いする内容は、非常にざっくりしたものなんです。決まっていることは、メイン食材と場所くらいなので、後は担当するシェフにお任せ。これって結構、料理人泣かせなんですよね。でも、松岡料理長は、嫌な顔ひとつせず、いやいやむしろ喜んで、私たちの想像を超えるお料理を提供してくださるんですよね。さらに、その料理している姿や参加者の方々とお話ししている姿が本当にイキイキしているんです。


 そんな松岡料理長に今回は、川内村の食材を使ってのワインに合うお料理に仕立てていただきました。


 まずはアミューズの一皿目。

 「川内村の岩魚と野菜のピンチョス」

 地元の農家さんがマルシェに出すために持ってきた肉厚の椎茸を見て、松岡料理長が「これは絶対美味しいから」とその場で仕入れて、追加してくれた椎茸のグリルも。この椎茸が大正解で、五穀米と岩魚の押しずし風の前菜にさらなるアクセントをつけてくれて、山の幸を一気に感じられるEat Localを体現するオープニングディッシュとなりました~!


 お次は、オードブル。

 「川内村の野菜とそば粉のガレット仕立て モッツアレラチーズと共に」


 このガレットがまたワインに合うんです~。もっちりとしたそば粉のガレットに半熟たまごがトロ~りソースみたいに絡まって、さらにチーズの塩味が食欲をそそります。


 メインはこちら。

 「川内村の岩魚のムニエル 白ワインバターソース」

 お魚でメインはFoodCamp!では今年初かもしれません。そして、なかなか調理が難しいであろう川魚を白ワインバターソースで上品に。添えてあるズッキーニやプチトマト、ネギはもちろん川内村産のお野菜です。


 そして、デザート。

 「ニューヨークチーズケーキ カルフォルニア赤ワインゼリー添え」

 もう、ビジュアルからして美しいし、美味しくないわけがない。結構、テイスティングでも飲んでいるのですが、今日はワインがどんどん空いてきます。この赤ワインゼリーがすこぶる美味しくて。チーズのビスコッティは甘くなく、香ばしくってまたワインが進んじゃう~。もう、「最後までワインを飲ませる!」という松岡シェフの狙いにハマってしまいました。

 チーズケーキの手前のチョコボールは、ワイン用のブドウを干しブドウにしてチョコレートでコーティングしたもの。これは高木社長からのプレゼント。シャルドネとメルローのブドウです。どっちがどっちかな??食べてわかれば相当なワイン通!

 みなさん、この笑顔。もう楽しいのが伝わってきますよね。


 お腹もいっぱいで、しかもワインでかなりいい気分の後は、特設マルシェタイム。このマルシェが実に手作り感満載で、これがまたイイ!!

 村のお母さんたちが作った野菜やお漬物を軽トラックの荷台に積んで、そのままお店になるという優れモノ。ああ、軽トラって便利だわ~と感心しつつ、このまたお漬物がまたウマイのなんのって。

 シェフのフレンチも美味しかったけど、お母さんたちがつくるフキや蕨の漬物がむちゃくちゃおいしくて。いろいろ味見させてもらいながら、お隣のブースではお米の試食と言って、小さく握ったご飯もいただいてしまいました。これがまた超絶おいしー。


 そうそう、ランチのアミューズの前に、お母さんたちが作ったきゅうりの一本漬けもごちそうになりました。

 このキュウリがまた程よい塩分で、ヴィンヤードを歩いてきた体に適度な塩分と水分で染みる~。(この方本当に美味しそうに召し上がるのですが、友人です)

 川内村はフキや蕨などの山菜も豊富に採れます。お米も特別栽培米といって、農家さんの模範になるような美味しいお米を作っているんですよ。


 そして、清流でないと生息しない岩魚が川内村にはたくさんいまして、村の特産品になっています。現在は養殖もしていますが、この岩魚の燻製やアヒージョ、炊き込みご飯の具などの加工品もありました。個人的には岩魚の燻製が一押しです(呑み助さんには抜群に受けます)。


 今回もお天気が良く、木陰を求めてのマルシェは大自然の中にすっかり溶け込んでいて、村の人たちの優しい語りも相まって本当に癒されました。


 毎回そうですが、楽しい時間はあっという間。お土産に村のお母さんたちが作った小松菜を1束づついただき、そろそろ、お別れの時間です。

 現地集合の参加者のみなさん、かわうちワイン(株)の方々、孫の手トラベルのスタッフ総出でお見送りです。ほろ酔い気分もあって、参加者のみなさんのはしゃぎっぷりは最後まで続いています!!


■後日談・・・・ブドウが実をつけました!!!


 6月のFoodCamp!から約2か月後。再びかわうちワイン(株)さんの高田島ヴィンヤードに行って参りました。というのも、ブドウの実がなりましたよ~とお知らせが!


ワインツーリズムの頃は、ブドウの花が咲いていた頃。

 背丈もまだ大人の腰より下くらいの高さでした。ところが、あれから2ヵ月も経つと・・・。ジャーン!!!

わさわさと背丈が伸び、葉っぱもたくさん茂っています。

ブドウの実が付いています。おおー、かわいい~。

 夏の間は、摘芯作業といって、木を強くするために伸びた枝を切る作業にスタッフのみなさんは追われていました。私もほんの少しお手伝い。剪定バサミを借りて、伸びた枝をチョキチョキ切るのですが、この広大な敷地ですからなかなか終わりません。一連ずつ往復を繰り返すこと数回。炎天下の作業はこたえますが、時々吹く高原の風が心地よいです。


 そして、見渡すばかりのブドウ畑は、以前よりも葉が生い茂り、ブドウ畑の様相が色濃くなっています。ワイン愛好家でなくても、この景色に心奪われる気持ちはよくわかります。

 10月上旬にはブドウの収穫時期を迎えるそう。本格的な醸造は来年以降とのことですが、どんなワインが出来るのか本当に楽しみです。(終)


撮影協力:田島 寛久


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 孫の手トラベルではこのように、福島県内の魅力溢れるスポットにフードカートを乗り入れ、そこでしか味わえない食体験ツアーをご提供しています。今年のFoodCamp!も残りわずかとなりました。ご興味ありましたら、是非、ご参加ください。


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かわうちワイン(株)さんでは、圃場のボランティア作業をお手伝いいただける方を募集しています。作業内容、作業日程等についてはホームページにてご案内予定とのことです。こちらも合わせてご覧ください。

かわうちワイン株式会社 http://kawauchi-wine.com/


孫の手トラベル 2018FoodCamp!レポート

各回のFoodcamp!レポートを綴っています。